
要約
兵庫県豊岡市で、市民と行政と企業が協力して地方都市のくらしをより多くの人が長く楽しむためのアイデアを考えるイベントを開催しました。約30人が参加し、様々な職業の人々が集まり、6つのチームに分かれて移動、居場所づくり、読書と自然、里山活用、地蔵、スナックのテーマでアイデア出しや開発を行いました。イベントの合間には懇親会や観光ツアーもあり、参加者同士の繋がりや地域への愛着を育みました。各チームから提案されたアイデアの例として、天候情報や交通規制情報などから迂回ルートを提案するシステムや、社会的に孤立している人々をつなげる場の情報を提供するシステムなどがありました。
注: 要約はAI(chatGPT)を用いて作成しました。
レポート
このイベントは兵庫県豊岡市を舞台として、地方都市のくらしをより多くの人が長く楽しむために必要なアイデアを、市民と行政と企業が3日間の中で一緒に考え、実際に形にしていく(開発していく)取り組みです。このような開発イベントはハッカソンと呼ばれることもあり、何か有意義なものが生み出されるだけでなく、参加者同士の強い繋がりや地域への愛着が育まれることが期待されます。

写真: イベント参加者は主に関西と東京から来てくれました
イベントには豊岡市だけでなく、関西と関東から約30人が参加し、運営スタッフも合わせれば、およそ50名がイベントに関わりました。ソフトウェアエンジニアだけが参加するのではなく、高校生や大学生、医師や保健師、行政職員や金融機関の職員、地域おこし協力隊など、様々な方々に集まっていただきました。ハッカソン常連の方々からも「女性参加者も含め、これだけ多様な人が集まるハッカソンはあまりない」というコメントをいただきました。

写真: イベントの全体プログラム
「移動」「居場所づくり」「読書と自然」「里山活用」「地蔵(地域文化)」「スナック(ナイトライフ)」をテーマとして、6チームに分かれて、課題設定からアイデア出し、実際の開発を三日間かけて行いました。アイデア出しの際には、デザイン思考と呼ばれる手法も取り入れたり、カードゲームの要素なども盛り込むなど、様々な工夫を凝らしました。
開発にあたっては、FIWARE(ファイウェア)と呼ばれる各種データを連携させる仕組みや、運営が用意したデータを少なくとも一種類使うことがルールで、地域課題とデータを掛け合わせたアイデアを競いました。

写真: チーム分けのためのテーマ紹介プレゼンテーション(この方以外はパワーポイントを使っていました)

写真: テーマの深堀りやアイデア出しのワークショップ

写真: 実際の開発風景(運営スタッフの専門性も活かされていました)
三日間かけて行うイベントなので、参加者も集中力を保つのが大変です。イベントの合間には、豊岡の海の幸を食べつつの懇親会を行ったり(高校生も参加するのでノンアルコールです)、豊岡の観光地として有名な城崎温泉をめぐるツアーを開催したりと、少しでも豊岡の雰囲気を感じてもらえるように工夫しました。

写真: 暖かった日のランチ休憩の風景(豊岡市役所前にて)

写真: 城崎温泉ツアーの合間に、パブでパソコンを開くエンジニアの方々
最終的な提案として、各チームからは以下のようなアイデアとデモンストレーションが行われました。
「移動」チーム
課題
豊岡に住み始めて日が浅い人や、観光客は、突然の大雨や大雪に対して事前の備えや対応に関する情報がわからない。
解決策
気象情報や過去の交通規制情報、渋滞情報などから、迂回ルートを提案する。
「弁当忘れても傘忘れるな」などの、豊岡市ならではの移動に関する生活の知恵をシェアする。
「居場所づくり」チーム
課題
社会的に孤立している方々に、社会的に繋がれる場(コミュニティ)を紹介するにあたって、場の基礎情報(開催日時や場所など)以外の肌感のある情報(雰囲気や、参加者が関心のある話題など)を把握・共有しづらい。
解決策
LINEグループを使って、普段のやり取りの情報をAIに与えて分析させることで、肌感のある情報を収集する。
今後の展望として、場に参加するための移動情報の提供や、LINE以外の情報収集の方法も検討する。
「読書と自然」チーム
課題
豊岡市の公立図書館の利用者数や貸出点数が減少傾向にある。
豊岡の自然に関する観光地(海水浴やスキー場)が、春や秋などの気候のよいシーズンに活用されていない。
解決策
自然の中での読書を推進する。野外で本を読むのに適した場所や、気象情報、経路をアプリでレコメンドする。
読んだ本の感想をアプリ上でシェアする。
「里山活用」チーム
課題
豊岡の農作物を支えるきれいな水資源は里山によって守られている側面があるが、里山管理の担い手が不足して、今後の維持管理に課題がある。
里山づくりをしようにも、害獣がすぐに荒らしてしまう(鹿がチューリップを食べる等)
解決策
里山管理のシミュレーションゲームを開発し、「里山づくりグランプリ」を開催する。シミュレーションに用いたデータとしては、有害鳥獣の駆除データや、コウノトリ人工巣塔データ、動態管理デバイスデータなど。
「地蔵(地域文化)」チーム
課題
豊岡には地蔵文化が残っているものの、地蔵を管理する担い手の減少や、地蔵の数や由来などの情報が適切にアーカイブされていない。
子どもが地蔵文化に触れるきっかけが少ない。
解決策
地域に点在する地蔵とその由来等の情報をマッピングし、アプリ上で検索できる。また、スマホから各地蔵に電話をかけて地蔵の説法(オープンデータ)を聞くことができる。
今後の展望として、地蔵の情報をみんなで投稿できる機能や、地蔵の人気投票機能などを検討する。
「スナック(ナイトライフ)」チーム
課題
豊岡において、若者人口が減っており、市民アンケートでも街のにぎわいの満足度が低い。
解決策
人口比率で見てスナックの店舗数が多い豊岡市において、若者がスナックを訪れて街の人々と結びつく仕掛け作り。
スナックを訪れてポイントを貯めるシステムを開発。渋滞度データや気象データなどを用いて、お客さんに来てほしいタイミングでポイントを自動的に加算させる仕組み。またNFTの仕組みを使って、VIP会員証を知り合いに貸し出せる仕組みを開発。

写真: 最終プレゼンと、開発物のデモンストレーション

写真: 電話を使ってお地蔵様からの有難いお言葉(オープンデータ)を試している風景
最優秀賞は「地域のコミュニティを必要な方々に紹介する時に便利なサービス」を開発した居場所づくりチームが受賞しました。なかなか外部からは見えにくい地域コミュニティの肌感のある情報を、LINEとchatGPTなどを使って明らかにしようという試みです。専門的には社会的処方という分野で必要になるであろうサービスで、地方都市にとって重要なテーマであり、AIの活用方法としてユニークだという点などが評価されました。

写真: 最優秀賞を受賞した「居場所づくりチーム」
参加者からは「エンジニアやデザイナーなど、豊岡では普段出会わない立場の人たちや、大学生、高校生など学生たちと一緒にモノをつくるという経験がとても新鮮でした。これまで参加したまちづくりのイベントでは、アイディアを練って共有するまでで終わることが多かったですが、ハッカソンは実際に動くアプリケーションの開発までを行います。こうしたシビックテックの活動が豊岡の中で広がっていき、実際に市民の方や観光客に使ってもらえるサービスが実現できれば面白いと思いました。」といった声が届きました。また、テーマを発表してくれた高校生からは「チームのメンバーとの対話を通じて、もともと自分の考えていたことの目的ややりたかったことが具体的に整理できたのがよかった」といったコメントもありました。
豊岡スマートコミュニティでは、適切な技術を使って暮らしを豊かにしようとする人たちを繋げる取り組みや、様々な実証実験を行っています。団体の概要や、活動内容については、以下のホームページをご確認ください。
参考
ハッカソンで用意したFIWAREの機能
TypeとIDの組み合わせでEntityを表現し、データを読み書きする。
特定のEntityに対してイベントサブスクリプションをする。
現在値を時系列データとして記録し、取得する。
ハッカソンで用意したデータ(API)一覧
気象関係
雨量
河川水位
降雪量
積雪量
道・移動関係
渋滞情報
危険運転箇所
目的地経路
道路台帳
道路規制情報
電車運休情報
アンダーパス冠水状況
デバイス(除雪車やゴミ収集車などの位置情報を庁内管理するために用いているデバイス)
動態管理(緯度経度/速度/方角)
その他
有害鳥獣捕獲履歴
その他、豊岡市や兵庫県のオープンデータなど
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