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「豊岡はオセロの隅になれる」

  • 執筆者の写真: 豊岡スマートコミュニティ推進機構 TSC
    豊岡スマートコミュニティ推進機構 TSC
  • 6月23日
  • 読了時間: 10分


TSC理事・太田直樹さんに聞く、豊岡の可能性

2026年6月3日、豊岡市役所でTSC理事会が開催されました。

豊岡スマートコミュニティ推進機構(TSC)は、豊岡市役所と但馬信用金庫をはじめとする民間事業者が連携し、行政だけでも民間だけでも解決が難しい地域課題に挑戦するために生まれた団体です。 現在も移動や子育てなど、さまざまな地域課題に向き合うプロジェクトが進んでいます。

理事会には、理事長である門間市長をはじめ、理事の皆さんが出席し、TSCの活動や今後について意見交換が行われました。 

理事会終了後、TSC理事の太田直樹さんにあらためてお話を伺う機会をいただきました。


株式会社New Stories 代表取締役。内閣官房参与(デジタルトランスフォーメーション担当)として、国のデジタル政策に関する助言を行う。
株式会社New Stories 代表取締役。内閣官房参与(デジタルトランスフォーメーション担当)として、国のデジタル政策に関する助言を行う。

なぜ太田さんは豊岡に関わり続けているのか。豊岡にはどんな可能性があるのか。そして、TSCにはどんな役割が求められているのか。

対話の中で特に印象に残ったのが、

「豊岡はオセロの隅になれるかもしれない」

という言葉でした。


なぜ太田さんは豊岡に関わり続けるのか

――太田さんは全国各地の地域づくりに関わっておられますが、その中でもなぜ豊岡に注目しているのでしょうか。 そう尋ねると、太田さんはまず「まちの規模」の話をしてくれました。

人口数千人くらいの小さな町だと、キーパーソン一人の力で大きく変わることがあります。

逆に政令指定都市クラスになると、企業が本格的なビジネスとして参入することもできる。

でも、その間にある都市は難しいんです。

関係者も多いし、課題も複雑。でも企業だけでは動きにくいし、一人のリーダーだけでも変えられない。

だからこそ面白いし、価値があるんです。

豊岡は、まさにそんな規模のまちです。

行政があり、企業があり、市民活動があり、さまざまな人が関わっている。

だからこそ簡単ではない。

しかし太田さんは、そこに可能性を感じていると言います。

オセロって、隅を取ると一気に流れが変わるじゃないですか。

豊岡には、そういう可能性があると思っているんです。

豊岡で何か面白い変化が起きたら、それが但馬だけじゃなくて山陰にも広がるかもしれない。

同じような課題を抱えている全国の地方都市にも影響を与えるかもしれない。

豊岡は、そういう「オセロの隅」になれる場所だと思っています。


地方都市が抱える課題は、豊岡だけのものではありません。

だからこそ、豊岡で生まれた挑戦や変化には大きな意味がある。

太田さんは、そんな視点から豊岡を「オセロの隅」になれるまちだと語ってくれました。


豊岡には、人を惹きつける物語がある

対話の中で、太田さんが何度か口にした言葉があります。

それが「ナラティブ」です。

ナラティブとは、「物語」や「語り」を意味する言葉で、近年は地域づくりやまちづくりの分野でも注目されています。

「ナラティブ」という考え方は、私たちにとっても豊岡を見つめ直す大きなヒントになりました。
「ナラティブ」という考え方は、私たちにとっても豊岡を見つめ直す大きなヒントになりました。

――太田さんは、なぜナラティブというアプローチを大切にしているのでしょうか。

地域って、人口や観光客数みたいな数字だけでは説明できないんですよ。

もちろん数字は大事なんです。でも、それだけ見ていると見えなくなるものがある。

その地域がどんな歴史を歩んできたのか。どんな挑戦をしてきたのか。どんな人たちが暮らしているのか。

そういう積み重ねられた物語があるんです。

人がなぜその地域に惹きつけられるのか。なぜそこで新しい挑戦が生まれるのか。

そういうことは数字だけでは説明できないんですよ。

面白い人も、お金だけでは動かないんです。

「この地域で何かやってみたい」と面白い人や外部の人が思うのには、その地域の魅力がナラティブに表現されているからという場合が多いように思うんです。

――では、太田さんは豊岡にどんなナラティブがあって、魅力を感じてくださっているのでしょうか。

私が豊岡に来始めたのは2015年か2016年頃なんですけど、アルチザンスクールを見に行ったんですよ。

そこでまず印象的だったのが、学費が結構高いんですよね。百数十万円くらいする。

それでも若い人もいれば40代くらいの人もいて、10人くらいが学んでいることに驚きました。


高い学費を払い、時間をかけてでも「豊岡で」鞄づくりを学びたい人がいる。

豊岡の産業や技術に外から人が惹きつけられているということが、太田さんには印象的だったそうです。


ちょうどその頃、城崎国際アートセンターを中心に、アーティスト・イン・レジデンスの動きも始まっていたんです。

作品を作るために、外から、外国からもアーティストが来て豊岡に滞在するような仕組みで。


――豊岡には、昔からある産業と、新しく始まった文化的な動きの両方に、外から来た人が関わっているんですね。


そうですね。

そういう動きが、豊岡の中で同じ時期に起きていたことが面白いなと思いました。


太田さんが豊岡の面白さを感じたのは、外から人が集まっていることだけではありません。

その文化が、地域の人たちの暮らしの中に自然と溶け込んでいることでした。


演劇もそうですよね。

芸術祭をやっている地域は全国にたくさんあります。

でも豊岡は演劇なんです。

しかも、町のおばあちゃんも普通に舞台に立っている。

あれはなかなかないですよ。

外からやってきた演劇という文化が、特別なイベントとして存在しているという状態ではなく、地域の人たちの暮らしの中に入り込んでいる。

外から来た文化なのに、地域の人たちが自然に関わっているんですよね。

そういうのは簡単にはできないと思います。


演劇という文化が地域に根付き、民間企業も関わるようになった。その変化の積み重ねもまた、豊岡が育んできた物語の一つです。
演劇という文化が地域に根付き、民間企業も関わるようになった。その変化の積み重ねもまた、豊岡が育んできた物語の一つです。

昔からあるものを大切にしながら、新しい文化も受け入れてきた。

太田さんは、そうした積み重ねこそが豊岡の「厚み」なのだと話していました。


コウノトリもそうですよね。

今では豊岡の象徴みたいになっていますけど、あれも長い時間をかけて積み上げてきたものです。

豊岡にはそういう歴史や挑戦の積み重ねがあり、そこには、ナラティブ(物語)がある。


コウノトリの野生復帰は、豊岡が長い時間をかけて積み重ねてきた挑戦の物語です。
コウノトリの野生復帰は、豊岡が長い時間をかけて積み重ねてきた挑戦の物語です。

一つひとつの取組みだけを見るのではなく、その背景にある物語を見てそれを言葉にしていく。

太田さんが大切にしているナラティブとは、そうした地域の物語を共有していくための考え方でした。 


文化資本がある地域は強いんですよ。

文化が経済を引っ張っていくんです。

面白い人はお金だけでは動かない。

面白い場所に集まるんです。


太田さんは、カバンや演劇、コウノトリだけでなく、豊岡にはナラティブにまとめあげることができる魅力がまだたくさんあると言います。

人に伝わる物語として語っていくことで、地域の可能性はさらに広がっていく。

さらに、地域課題に向き合い解決に向かって進んでいく道のりもまた、人に共有され、共感される物語になっていく。

太田さんのお話から、取組みの一つひとつを丁寧に言葉にしていくことが、豊岡の次の挑戦につながっていくのだと感じました。


地域の未来をつくるのは「面白い人」

ナラティブの話に続いて、太田さんが何度も口にした言葉があります。

それが「面白い人」です。

――太田さんは、地域の未来を考えるとき、どんなことを大切にしているのでしょうか。 

数字とか資料だけ見ると、人口減少とか課題ばかり見えてくるんです。

でも実際に現場へ行くと違う。

面白い人がいるんですよ。

――「面白い人」がいることは、地域にどんな影響を与えるのでしょうか。 


地域課題を解決する仕組みをつくることももちろん大事なんです。でも、それだけではなかなか広がっていかない。

むしろ大事なのは、その地域で動いている人なんですよ。

面白い人がいると、その人に惹きつけられて人が集まる。

そこで新しいつながりが生まれて、そのつながりを通して変化が広がっていくんです。 だから、課題だけを見るのではなく、その課題に向き合っている人にも注目しているんです。

私が長く関わる気仙沼では、地域で挑戦している面白い人たちを見える化したんです。 そうしたら、高校生たちが「この地域にもこんな大人がいるんだ」と知るようになった。

そうすると「ここで働くのも面白そうだな」と思う子が出てくるんです。

地域で面白く生きている大人を知ることは、子どもたちが将来の選択肢として地元を考えるきっかけにもなるといいます。

親や先生以外にも、地域にはさまざまな生き方をしている大人がいる。

その存在を知ることで、地域の見え方は変わるのかもしれません。

そして太田さんは、豊岡にもそんな面白い人たちがたくさんいると言います。

挑戦している人。

誰かのために動いている人。

自分の好きなことを地域で形にしている人。

豊岡にも、まだ出会えていないだけで面白い人はたくさんいると思うんですよ。

地域の未来をつくるのは、そうした面白い人たちなのかもしれません。

なぜ豊岡には人が集まるのか

話題は、豊岡に移住者や地域おこし協力隊が多く集まっていることにも及びました。

豊岡は全国的に見ても、移住者が多く集まる地域の一つです。

―― なぜ、これほど多くの人が豊岡に惹きつけられるのでしょうか。

豊岡には、人を惹きつけるストーリーがあるんですよ。

外から来る人たちは、新しい価値を持ち込んでいるわけじゃないんです。

もともと豊岡にあった魅力や可能性を見つけているんだと思います。

だから、移住者が増えているというより、人を惹きつける力が豊岡にあるということなんじゃないでしょうか。

―― 確かに、豊岡に移住してきた人たちに話を聞くと「面白い人がいる」「何か始められそうな空気がある」といった声をよく耳にします。 移住者が増えているというより、豊岡そのものが持つ魅力に人が惹きつけられている、ということなんですね。 

そうだと思います。

昔からあるものを大切にしながら、新しい人や新しい挑戦も受け入れてきた。

その積み重ねが今の豊岡なんだと思います。

地域の人と、外から来た人。

昔からあるものと、新しいもの。

それらが自然に混ざり合える土壌が、豊岡にはあるのかもしれません。

豊岡が持つ魅力について話す太田直樹さん。
豊岡が持つ魅力について話す太田直樹さん。

TSCは「出会い」が生まれる場所になれる

2026年6月3日に開催されたTSC理事会では、理事長である門間市長からも印象的な発言がありました。


市長は、

「TSCは、行政では拾いにくいマイノリティーの課題を扱い、その解決が結果として地域全体に波及する可能性を持つ」

という考えを示しました。  また、人やアイデア、課題や支援者をつなぐ『情報商社』のような役割も、TSCの価値ではないか、とも語りました。

太田さんとの対話を振り返ると、その言葉とも重なる話がありました。

――今後、TSCに期待することはありますか。

面白い人と面白い人が出会うと、新しいことが始まるんですよ。

豊岡には、まだ出会えていない人がたくさんいると思うんです。

TSCには、そういう人たちがつながる場になれる可能性があると思います。

豊岡にはすでに「面白い人」や「さまざまな挑戦」といった、たくさんの物語があります。

その物語同士がつながり、新しい挑戦が生まれるきっかけをつくること。

それもまた、TSCが果たせる大切な役割なのかもしれません。

TSCは、行政、民間事業者、市民活動など、さまざまな立場の人が関わる組織です。

だからこそ、普段は出会わない人同士がつながり、新しい挑戦が生まれる可能性があります。

太田さんとの対話を通して、人と人が出会うきっかけをつくることこそ、TSCの大切な役割の一つなのだと改めて感じました。

終始和やかな雰囲気の中、豊岡の可能性についてじっくり意見を交わしました。
終始和やかな雰囲気の中、豊岡の可能性についてじっくり意見を交わしました。


おわりに

太田さんとの対話を通して見えてきたのは、豊岡にはすでにたくさんの可能性があるということでした。

厚みのある文化があり、数字だけでは語れない物語があり、地域で動いている面白い人たちがいる。 その一つひとつは、もう豊岡の中にある。

太田さんが語った「オセロの隅」という言葉のように、豊岡から始まる小さな挑戦が、やがて周囲へ広がっていくかもしれない。 そして、その広がりを生み出すのは仕組みだけではなく、人と人とのつながりです。 

TSCはこれからも、そうした人や活動が出会う場をつくり、豊岡の新しい挑戦につなげていきたいと思います。






 
 
 

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