「みんな×エール〜みんなで考える新しい移動のしくみ〜」開催レポート
- 豊岡スマートコミュニティ推進機構 TSC

- 4月29日
- 読了時間: 15分
「みんな×エール〜みんなで考える新しい移動のしくみ〜」を開催しました

こんにちは。豊岡スマートコミュニティ推進機構(TSC)のまつじゅんこと松原潤です!
4月22日、「みんな×エール 〜みんなで考える新しい移動のしくみ〜」を開催しました。
今回のテーマは「移動」。 買い物、鉄道、バス、そして地域の暮らしそのものにも深く関わるこのテーマについて、みんなで考える特別な回になりました。 定員50名で参加者を募集していましたが、当日はそれを上回る60名以上の方にご参加いただきました。
それだけ多くの方が集まってくださったことに「移動」というテーマに対する関心の高さを実感しました。
そして、それ以上に印象的だったのは会場に流れていた熱量でした。
3時間という長丁場にもかかわらず、最後まで発言が途切れない。
さらに真剣に語っているのに、あちこちで笑い声も聞こえる。
「移動」という一見まじめで重たくなりそうなテーマなのに、ちゃんと人の熱と楽しさがある。
そんな、みんな×エールらしい時間になったと思います。
今回、進行役を一緒に務めてくれたのは、豊岡高校に通う高校2年生の「みみこ」こと岸之上ことみさん。
移動の課題というと、どうしても大人の暮らしや通勤の話になりがちです。
でも、そこに高校生であるみみこが立ってくれたことで、このテーマがぐっと身近で、世代を超えたものになったように感じました。

みんな×エールと福祉モビリティのコラボによる特別版
今回のイベントは「みんな×エール」と、TSCの別プロジェクトである「福祉モビリティ」が重なったことで生まれました。 みんな×エールは、地域で動いている人たちの取り組みを知り、参加者みんなで応援のアイデアを出し合う場。 一方の福祉モビリティは、福祉車両など地域にすでにある資源を活用しながら、移動で困っている人たちを支える仕組みを考えていくプロジェクトです。 どちらも、それぞれに人が集まり、それぞれに熱量のある場。
だったらこの2つを掛け合わせて、豊岡の移動をテーマにみんなで考える場を作ったら、面白いことが起きるんじゃないか。
そんな発想から、今回の特別版が生まれました。

「前半 みんな×エール」
今回の前半パートでは、移動課題の解決にそれぞれ違う角度から取り組んでいる3人に登壇していただきました。
地域にあるものを持ち寄って、買い物支援の仕組みをつくる
1人目のプレゼンターは、地域おこし協力隊の中沢佑允さん。

中沢さんが関わっているのは、「地域買いもん行こカー」。
コープこうべと豊岡市社会福祉協議会の共同事業で、中沢さんは地域コーディネーターとして参加されています。
買い物に困っている人、いわゆる「買い物困難者」を地域で支える取り組みです。
中沢さんの話でまず印象的だったのは、「ないものを新しく作る」のではなく、すでに地域にあるものを持ち寄って仕組みにするという考え方でした。
たとえば、デイサービスの送迎車両の空き時間を使う。
地域の人がドライバーとして関わる。
誰か一人が全部をやるのではなく、それぞれができることを持ち寄って、共助の仕組みを作っていく。
その背景には、公助・自助・共助という考え方があります。
行政による支援にはどうしても限界がある。
かといって、個人で何とかするのもしんどい。
だからこそ、地域で支え合う共助に可能性がある。
中沢さんは、そんな考え方で地域ごとの仕組みづくりに向き合っていました。
ただ、中沢さんが今ぶつかっている壁もリアルでした。
「今はまだ大丈夫だから必要ない」
そう言われることも少なくないそうです。
でも中沢さんが見ているのは“今”ではなく、この先の豊岡です。
買い物で困る人がもっと増える前に、今のうちから地域で支える土台を作っていかないと間に合わない。
だからこそ今回の問いは、私たちが豊岡で幸せに暮らし続けるために「今は大丈夫と思っている人たちにどうやったら現状とこれからを伝えられるか」でした。
そして、もうひとつ素敵だったのは、中沢さん自身の変化です。
中沢さんは地域おこし協力隊として県外から豊岡に来た方です。
これまでは「外から来た人」として、この地域の仕組みづくりに関わっていた部分もあったと思います。
でも、豊岡出身の方との結婚を経て、この先も豊岡で暮らしていくことになった。 豊岡が「関わる地域」から「自分の地元」になっていく中で、このまちのために頑張っていきたいという思いが、より強くなった。 その話が、僕にはすごく印象的でしたし、中沢さんのその熱い思いは、会場にもしっかり伝わっていたように感じました。
鉄道を守るために暮らしの中でできること
2人目のプレゼンターは、兵庫県立大学大学院修了生の田上敦士さん。

FMジャングルのパーソナリティーとしてご存じの方も多いかもしれません。
でも田上さん、実は小さい頃から筋金入りの鉄道好き。
そしてその“好き”を好きのままで終わらせず、もうすぐ還暦というタイミングで兵庫県立大学大学院に入り、鉄道に関する研究を行い論文を書き上げて修了したという、ものすごくかっこいい方です。
今回のプレゼンでは、JR山陰線をテーマにした研究のお話をしていただきました。
地域の人たちは、なぜ鉄道を使わないのか。
どれぐらい利用者数が減ると、存続の危機に近づくのか。
実際に地域に出向き、アンケートも行いながら、鉄道の可能性を丁寧に探ってきたそうです。
その中で田上さんがたどり着いたのは、やっぱり鉄道を守るには、地域住民が使うことが必要だということでした。
でも、これは簡単な話じゃありません。 日々の移動の中心がマイカーになっている中で、いきなり生活習慣を変えるのは難しい。 だからこそ田上さんが投げかけてくれたのは「“鉄道も使う”という選択肢をどう暮らしの中に増やしていくか」という問いでした。 駅にどんな機能があれば、使いたくなるだろう。
鉄道がどんな存在になったら、自分ごとになるだろう。
そんな問いが、参加者の中にもじわじわ残っていた気がします。 駅にどんな機能があれば、使いたくなるだろう。
データに裏付けられた説得力と、田上さん自身の鉄道愛。
その両方がしっかり伝わる、とても素敵なプレゼンでした。
バスがなくなることは他人事じゃない
3人目のプレゼンターは、豊岡市経営企画課交通政策室の田中聡絋さん。

テーマは、バス利用促進施策である「のってECO」でした。
豊岡では、どうしてもマイカー移動が強い。
だから、バスがなくなることの意味って、普段バスを使っていない人ほど想像しにくいのかもしれません。
でも田中さんは、バスがなくなることが何を意味するのかを、とてもわかりやすく伝えてくれました。
必要としている人の移動が失われる。
観光で来た人が、鉄道の駅がない地域を巡れなくなる。
人の移動が減れば、地域の中での交流も消費も減っていく。
それは、まち全体の元気が少しずつしぼんでいくことでもある。
つまり、バスは使っている人だけのものじゃないということです。
しかも田中さんが伝えてくれたのは、「マイカーをやめてバスに乗りましょう」という極端な話ではありませんでした。
マイカーが便利なのは、みんなわかっている。
そのうえで、生活の中に“バスも使う日”を作れないか。
それも、義務感ではなく、少し楽しさを持って使ってもらえないか。
そんな願いが込められたプレゼンだったと思います。
個人的にすごく印象に残ったのは、田中さんの発表の雰囲気です。
行政の発表と聞くと、文字がたくさん並んだ固いスライドを想像しがちなんですが、今回の資料はとてもシンプルでスタイリッシュ。
そこに田中さんの柔らかい語り口が重なって、すごく親しみやすく、わかりやすい時間になっていました。
そして田中さん自身も、今回のプレゼンづくりを通して、改めて「なぜ豊岡にとってバスを残す必要があるのか」を考え直したと話していました。 だからこそ、ただの事業説明ではなく、自分の言葉として伝わる発表になっていたのだと思います。 『のってECO』の公式ページはこちらから
今回ならではの熱量あふれるアイデア出し
3人のプレゼンの後は、テーブルごとに分かれてアイデア出しへ。
みんな×エールではいつも、「実現性よりまず数、とにかくたくさん出そう」という空気を大事にしています。
今回も僕の方から、かなり強めに「ぜひアイデアを出してください」と呼びかけていました。
でも、今回はちょっと違いました。
参加者の皆さん、それぞれがすでに移動というテーマに対して強い想いを持っていたんです。
だから、ただアイデアをポンポン出すというよりも、「自分はこう感じている」「地域でこういう場面を見てきた」「実はこういうことで困っている人がいる」といった、思いを語り合う時間になっていました。
結果として、班によっては、普段のみんな×エールに比べると紙に書き出されるアイデア数が少なかったところもありました。
でも僕は、それも今回らしいなと思っています。
それだけ、このテーマが一人ひとりにとって切実だったということ。
それだけ、語りたくなるテーマだったということ。
そしてその中からでも、ちゃんと面白いアイデアはたくさん出てきました。
何よりよかったのは、真剣に話しているのに、笑い声が絶えなかったことです。
熱く語ってる。でも笑ってる。
この空気、ほんとにみんな×エールらしくて、僕はすごく好きでした。
そしてその様子を、進行役として一緒に立ってくれたみみこが見てくれていたのも、すごく意味があったと思っています。 豊岡の大人たちが、まちのことを本気で考えながら、でも楽しそうに語り合っている。その場に高校生が一緒にいる。 それだけでもすごく価値のある光景だったように感じました。


「後半 新しい移動のしくみ豊岡ミーティング」
CDPJの手法を使ったワークショップへ
後半は、これまで2回開催されてきた「新しい移動のしくみ豊岡ミーティング」の第3回という位置づけで行われました。
これまでの豊岡ミーティングは、実践者や有識者の話を聞く、いわばフォーラム・シンポジウム型のイベント。
でも今回はそこに、コミュニティドライブプロジェクト(CDPJ)の手法を取り入れて、参加者自身が手を動かして考えるワークショップ型で開催しました。
この“聞くだけじゃなく、自分も考える”という形が、みんな×エールとのコラボにもすごく合っていたと思います。

地域のマインドセットが大事
まずはCDPJとは何か、という説明から始まりました。 話してくださったのは、一般社団法人スマート福祉ラボの小柴さんと、図解総研の近藤さんです。

そこで語られた考え方が、僕にはすごく刺さりました。
移動の課題を解決しようとすると、どうしても「どんなサービスを作るか」「どんな仕組みを始めるか」から考えたくなります。
でもCDPJは、そこから始めない。
まず必要なのは、地域の中に、課題を自分ごととして捉える人が増えること。
つまり、人材の発掘や育成、そして「この地域の課題に向き合おう」というマインドセットを育てることから始めるという話でした。
CDPJは、3年がかりで地域に伴走していくそうです。
1年目は、地域のキーマンの発掘として関心のある人たちが集まり、課題を出し合う。
2年目は、その課題をどうプロジェクトにしていくかを考え、機運を醸成していく。
3年目には、実際に移動課題の解決に向かう体制を構築し、小さく実証実験を進める。
どこかが作ってくれた仕組みをただ受け取るだけだと、どうしても他人事になりやすい。 でも、地域の人たちが「これは自分たちのことだ」と感じながら関わっていけば、そこにはちゃんと持続性が生まれていく。 それが“地域で支える移動”につながるんだなとすごく納得しました。

「地域課題」の正体って何だろう?
後半のワークショップも、本当に面白かったです。
そこで最初に投げかけられたのが、
「地域課題って何ですか?」
という問いでした。
この問いに対して語られたのは、地域課題とは「地域が持っている大きな課題」ではなく、個人個人が抱えている困りごとの集合体だということ。
これ、言われてみればその通りなんですよね。
“地域の課題”って言うと、なんとなく大きくて抽象的でつかみどころがない。
でも実際は、その背景に困っている誰かがいて、その人なりの事情や理由がある。
そこを見ていかないと、本当の意味での課題は見えてこない。
ワークショップ自体はすごくシンプルでした。
A4の白紙を真ん中で折って、上の段に「自分が感じている地域課題」や「聞いたことのある地域課題」を書く。
そして下の段に、その裏にある「移動課題」を書いていく。
今回のテーマは移動でしたが、いきなり移動課題から入るんじゃなくて、あえて地域課題から入って、その根っこにある移動の問題を探る。
これがすごく面白かったです。
たとえば「働き手がいない」という課題。それだけだと漠然としているけど、背景を見ていくと、「通うための移動手段が乏しい」といった移動の課題が見えてくるかもしれない。
こうやって考えていくと、ぼやっとしていた課題の輪郭が少しずつはっきりしてくる。
しかも「この課題を解決すると、こっちの課題にもつながるかもしれない」という関係性まで見えてくるんです。
本当にシンプルなワークなのに、見え方が変わる。 各班での共有もすごく盛り上がっていて、参加者の皆さんもその感覚を楽しんでいたように感じました。

課題を“見える形”にして次につなげる
図解総研の「課題マップ」
さらに面白かったのが、その先にある課題マップという考え方です。
CDPJでは、参加者が出した課題を、図解総研が整理して、課題同士のつながりが見える形に可視化していくそうです。
たとえば、別の人が出した課題でも、実は根っこが同じだったりする。
ある課題を直接どうにかしようとするより、そのもっと手前にある課題に手を入れた方が、結果的に複数の問題が動き出すこともある。
そういうことが、マップにすることで見えてくる。
漠然と「課題がある」で終わらせずに、その関係性まで見えるようにすることで、次に何を考えるべきかが見えてくる。
今回みんな×エールで出た声も、今後この課題マップとして整理される予定です。
参加者同士、全然知らない人が出した課題同士でも「実はつながってたんだ」と見えてくるかもしれない。
それが今からすごく楽しみです。

シビックとよおかが熱弁の中からアイデアを拾い上げる
今回のイベントでは、前半のみんな×エールも、後半の豊岡ミーティングも、各テーブルにボイスレコーダーを置いていました。
その場で出た声を、その場限りで終わらせないためです。
集まったアイデアや意見は今後、豊岡市のデジタル公聴システムであるシビックとよおかの中で可視化されていきます。
シビックとよおかにはAIの機能が組み込まれていて、どんな意見が出たのか、どんな傾向があったのかを、さまざまな形で見えるようにしてくれます。
そして、ここが今回すごく面白かったところ。
さっきも書いた通り、今回のアイデア出しは、普段のみんな×エールと少し違っていました。
参加者それぞれの移動への思いが強かった分、アイデアを出し合うというより、どうしても熱く語り合う場面が多かったんです。
その結果、紙ベースで見ると出たアイデア数は400件以上。
もちろんこれだけでも十分すごいんですが、ボイスレコーダーで記録した会話もシビックとよおかの中で分析してみると、その“熱弁”の中にもたくさんのアイデアが含まれていたことがわかりました。
最終的に、会話の中から抽出されたものも含めると、600件を超えるアイデアになったそうです。
これ、すごくないですか?
一見すると「話していただけ」に見える時間の中にも、ちゃんと提案やヒントが詰まっている。
それを拾い上げて、見える形にしてくれるんです。
さらに、そのシビックとよおかに集まった声も含めて、図解総研が課題マップを作ってくれる予定です。
そしてその課題マップも、今後シビックとよおかの中で公開されるます。
今回の可視化や課題マップは、このイベントのための特設スペースの中で公開される予定です。 その特設スペースに入るためのURLは、今後みんな×エール公式LINEで発行します。
今回参加した方も、当日は来られなかったけれど関心がある方も、ぜひみんな×エール公式LINEに登録して、これから形になっていくものを見ていただけたら嬉しいです みんな×エール公式LINEはこちらから

この夜だけでは終わらせない
今回のイベントでは、本当にたくさんの移動に関する声が集まりました。
それぞれが感じている課題を共有したり、いろんな思いに触れたりする場として、まずとても意味のある時間だったと思います。
でも、今回はそれだけで終わらせません。
シビックとよおかでの可視化。
図解総研による課題マップ。
そういった技術や手法を使いながら、今回集まった声を、今後の議論や展開につながる成果物としてちゃんと形にしていく。
そしてそこからさらに、豊岡市の移動について考える次のフェーズに進んでいく。
TSCとしても、そこはこれからしっかり続けていきたいと思っています。
そして、今回僕が参加者の皆さんに一番感じてほしかったのは「TSCがやることに協力する」ではなく、一人ひとりが豊岡の移動を考えるプレーヤーになれるということでした。
大きな課題って、どうしても「誰かが何とかするもの」に見えてしまいます。
でも実際は、一人ひとりが持っている経験や視点、得意なことを持ち寄ることで、動き出すものもたくさんある。
そういう意味で、あの場に集まった皆さんは、ただの参加者ではなくもうすでにプレーヤーだったんじゃないかなと僕は思っています。
僕自身、このイベントを通して、移動というテーマへの関心が一気に高まりました。
そして何より、ここから何かが始まる予感を強く感じた夜でもありました。
だからこそ、この日を一度きりで終わらせず、ここで生まれた熱やつながりを絶やさないように、これからもTSCとして動き続けていきたいと思います。
ご参加いただいた皆さま、登壇者の皆さま、関係者の皆さま、本当にありがとうございました。





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